機能分子生物学

科目名
Course Title
授業コード 単位数 配当年次 開講期間
Term
科目分類 ナンバリング
コード
曜日
コマ
教室 担当教員氏名
Instructor
機能分子生物学
Functional Molecular Biology
B301340001 2 2 後期授業 専門科目 CAAGC2303-J1 木1 B3-203 炭谷 順一

オフィスアワー

木曜日 11:50 - 12:50

授業目標

生命現象は予め遺伝子にプログラムされたものであり,遺伝子の構造と機能発現のメカニズムを分子レベルで理解することが重要です。本講義では,遺伝子の構造,複製,転写,翻訳,突然変異と修復,発現調節機構等について詳細に解説し,生命が如何に複雑で巧妙な仕組みで制御され,生命機能を発揮しているかについて理解することを目指します。本講義を受講することで,長年に渡る進化の過程で築き上げられてきた生命が如何に精巧で複雑で奇跡的な存在であるかを理解し,同じ生命として存在している自分自身について見つめ直すことを最終的な目標としています。具体的には以下の能力を身につけることを達成目標としています。
1.弱い化学的相互作用が生体分子の構造と機能,引いては生命活動の全てにおいて重要な役割を果たしていることを説明できる。
2.DNAの二重らせん構造から生じる位相幾何学的問題に対して,生命は積極的にそれを利用していることについて説明できる。
3.RNAの特異な構造形成基盤とその多様な構造から生み出される多様な機能について理解し,原始生命における主役となる分子であったことについて説明できる。
4.2メートルにも及ぶ長大なゲノムを十数マイクロメートルの直径の核内に如何に制御可能な状態で収納しているかについて説明できる。
5.DNAポリメラーゼ複合体の複製フォークにおけるDNA合成反応が,如何に統御された状態で進行しているかについて説明できる。
6.ゲノムに起こる多くの損傷に対して生体が備えている数多くの修復機構について説明できる。
7.RNA合成における開始認識機構について説明できる。
8.RNAスプライシングがなぜ真核生物において保存されているかについて説明できる。
9.翻訳に関わる多くの因子とその機能について説明できる。
10.遺伝子発現調節における様々な方式について説明できる。
11.単に用語を暗記して説明を鵜呑みにするのではなく,物事を理解する上で常に疑問を抱きその疑問を解消するプロセスを経て真の理解につなげることができる。
12.様々な知識を獲得しそれらを蓄積することを最終目標とするのではなく,そこから何を考え自分の行動にどう活かしていくかという視点で講義に臨むことができる。

教科書

ワトソン遺伝子の分子生物学 第7版,中村桂子監訳,東京電機大学出版局,2017年,10000円+税

参考書

細胞の分子生物学 第6版,中村桂子・松原謙一監訳,Newton Press,22,300円+税

関連科目

基礎生化学,基礎生命科学,代謝生化学,分子細胞生物学,分子遺伝学,構造生物学

授業時間外の学習(準備学習等について)

毎回,教科書40-50ページの内容について講義するため,非常に多くの内容について解説することになります。講義を聴くだけでは何も残らないので,知識を整理するために復習に重点を置いて学習して下さい。講義プリントを補助的に見ながら,教科書を読めば理解しやすいと思います。また,講義動画をオンラインで配信するので,対面講義で聞き逃した部分や理解出来なかった部分,或いは時間の関係で説明できなかった部分について理解を深めるようにして下さい。また,復習の励みとなるよう,毎回講義内容のテストをオンラインで行います。さらに,毎回授業の感想や疑問に思ったことなどを書いて提出してもらいます。それらについて質問への回答を含めて全員分,毎回メール配信しています。これを読むことで講義内容を再確認したり,疑問点を解消したりするとともに,「言われてみれば‥‥」と思い至らなかった疑問&回答を共有することで理解を深めて下さい。

授業の概要

遺伝子の子孫への伝達と遺伝子から生命現象の中心を担うタンパク質の合成に至る分子的メカニズムとその調節について,授業計画に示すように各ステップ毎に論述します。高校生物では触れられていなかった,「何のために?」とか「どのようにして?」という部分について合理的な解説を行います。単なる専門用語の「暗記」ではなく,遺伝子に纏わる生命現象のプロセスを「理解」することを目指し,「もっと知りたい」と思える学問の真の面白さを感じてもらえるような解説を心がけています。授業を理解するために復習は欠かせません。そのために例年は毎回授業最初に小テストを受けてもらっていましたが,今期は紙ベースのやり取りができないので,オンラインで復習テストを受けてもらいます。また,単に知るだけでなく,知ったことから何かを考えてもらうために,毎回講義終了後に感想や質問を書いてもらいます。各自情報端末を用いて授業終了直後に提出してもらいます。それらを全員に配布することで,疑問とその回答を共有するとともに他の人がどんなことを感じているか,それをどんなふうに文章として表現しているかなどを知ってもらい,改善のための助けとしています。
物理選択の人には,この講義を受講することで生物コンプレックスを解消してほしいと思います。できるだけ物理選択の人にもわかるように,基本用語から解説することを心がけています。莫大な量の専門用語が出てきますが,それらを暗記するのではなく,それらが有する機能とそれらが関わるプロセスを理解することに重点を置くことになりますので,物理選択の人もそれほど抵抗なく取り組んでもらえると思います。また,高校生物で獲得した知識の何倍もの新しい知識が必要となりますので,生物選択のアドバンテージはあまりありません。物理選択の人も安心して受講してもらえればと思います。
また,食品に興味を持って生命機能化学課程を選択した人も多いと思います。食品の機能性を明らかにするためには,生体反応を分子レベルで明らかにする必要があり,本講義で学習する内容はその基礎を理解するために必要となります。

授業計画

第1回 講義の概要
本講義の内容,進め方,受講に対する心構えなどについて説明します。
(目標)本講義の概要を聞くことで,本講義受講に対してのモチベーションを高めてもらいます。
準備学習等 教科書を予め購入し,第1章「メンデルの見た世界」P5-P19,第2章「核酸が遺伝情報を伝える」P21-P43を読んでおく。
第2回 強弱の化学的相互作用の重要性
(目標)弱い化学的相互作用が生体分子の働きに極めて重要であること,高エネルギー結合が生体反応を進行させる上で極めて重要であることを理解する。
準備学習等 第3章「強弱の化学的相互作用の重要性」P51-P76を読んでおく。
第3回 DNAの構造
(目標)DNAの構造,特に位相幾何学的な構造とその制御の生物学的意味およびRNAの特異な構造と機能の多様性について理解する。
準備学習等 メール配信した感想&質問への回答を読み,前回の内容について理解を深めるとともに,講義内容の復習を行い,小テストに備える。
第4章「DNAの構造」P77-P105を読んでおく。
第4回 RNAおよびタンパク質の構造
(目標)RNAの特異な構造と機能の多様性について理解する。また,タンパク質の高次構造形成機構と,その構造がもつ特異的な分子認識や触媒としての機能,そしてそれら機能の調節について理解する。
準備学習等 メール配信した感想&質問への回答を読み,前回の内容について理解を深めるとともに,講義内容の復習を行い,小テストに備える。
第5章「RNAの構造と多様性」P107-P120,第6章「タンパク質の構造」P121-P145を読んでおく。
第5回 ゲノム構造・クロマチン・ヌクレオソーム(1)
(目標)ゲノムの構成と細胞分裂時の染色体の分離方法について理解する。
準備学習等 メール配信した感想&質問への回答を読み,前回の内容について理解を深めるとともに,講義内容の復習を行い,小テストに備える。
第8章「ゲノム構造,クロマチン,ヌクレオソーム」P199-P256を読んでおく。
第6回 ゲノム構造・クロマチン・ヌクレオソーム(2)
(目標)染色体の構成単位であるヌクレオソームの構造とヌクレオソーム単位で構成されるクロマチン構造の構築方法とその制御方法について理解し,長大な染色体の維持方法について理解を深める。
準備学習等 メール配信した感想&質問への回答を読み,前回の内容について理解を深めるとともに,講義内容の復習を行い,小テストに備える。
第8章「ゲノム構造,クロマチン,ヌクレオソーム」P199-P256を読んでおく。
第7回 DNAの複製(1)
(目標)DNAポリメラーゼの反応の速さと正確性について,分子レベルで理解する。また,DNA複製にはDNAポリメラーゼ以外に多くのタンパク質が関与していることを理解する。
準備学習等 メール配信した感想&質問への回答を読み,前回の内容について理解を深めるとともに,講義内容の復習を行い,小テストに備える。
第9章「DNAの複製」P257-P312を読んでおく。
第8回 DNAの複製(2)
(目標)複製フォークにおけるDNAポリメラーゼ複合体が,DNAの位相幾何学的構造が抱える諸問題を解決するために,如何に協調的に働いてDNA合成反応を行っているかについて理解する。
準備学習等 メール配信した感想&質問への回答を読み,前回の内容について理解を深めるとともに,講義内容の復習を行い,小テストに備える。
第9章「DNAの複製」P257-P312を読んでおく。
第9回 DNAの変異と修復
(目標)多くの物理的または化学的損傷がDNAに対して起こるため,DNAの情報を正確に維持し続けるのは極めて難しいが,生体はそれら損傷に対して修復するための多くの機構を備え,正確な遺伝情報を維持し続けていることについて理解する。
準備学習等 メール配信した感想&質問への回答を読み,前回の内容について理解を深めるとともに,講義内容の復習を行い,小テストに備える。
第10章「DNAの変異性と修復」P313-P340を読んでおく。
第10回 組換えの分子機構
(目標)複製時に一本鎖になった部分のDNAが切断されたときの修復機構として生み出された相同組換えが,性の変換や遺伝的多様性を生み出す機構として発展していった詳細について理解する。
準備学習等 メール配信した感想&質問への回答を読み,前回の内容について理解を深めるとともに,講義内容の復習を行い,小テストに備える。
第11章「分子で見る相同組換え」P341-P376を読んでおく。
第11回 転写のしくみ
(目標)DNA複製が細胞周期1回につき1回だけ行われるのに対して,RNAポリメラーゼによる転写は必要なときに必要な遺伝子を必要なだけ転写するが,必要な遺伝子を転写する際の認識機構とその終結方法について理解する。
準備学習等 メール配信した感想&質問への回答を読み,前回の内容について理解を深めるとともに,講義内容の復習を行い,小テストに備える。
13章「転写のしくみ」P429-P466を読んでおく。
第12回 RNAスプライシング
(目標)真核生物の遺伝子発現では,イントロンに分断されたエキソンが転写後にRNAスプライシングという機構でつなぎ合わされるという過程が存在するが,その機構とそもそもなぜRNAスプライシングなるものが存在しているかの理由について理解する。
準備学習等 メール配信した感想&質問への回答を読み,前回の内容について理解を深めるとともに,講義内容の復習を行い,小テストに備える。
第14章「RNAスプライシング」P467-P507を読んでおく。
第13回 翻訳と遺伝暗号(1)
(目標)翻訳の過程に必要な因子群と翻訳開始点を如何に認識して翻訳を開始するかについて理解する。
準備学習等 メール配信した感想&質問への回答を読み,前回の内容について理解を深めるとともに,講義内容の復習を行い,小テストに備える。
第15章「翻訳」P509-P571を読んでおく。
第14回 翻訳と遺伝暗号(2)
(目標)翻訳の伸長過程に関与する因子群の役割について知ることで,どのようにして翻訳の正確性が保たれているかについて理解する。また翻訳終結や損傷を受けたmRNAの翻訳についても理解を深める。
準備学習等 メール配信した感想&質問への回答を読み,前回の内容について理解を深めるとともに,講義内容の復習を行い,小テストに備える。
第15章「翻訳」P509-P571,第16章「遺伝暗号」P573-P592を読んでおく。
第15回 原核生物および真核生物における遺伝子の発現調節
(目標)原核生物における遺伝子の発現調節方法について,lacオペロンを例に基本的な遺伝子発現調節の戦略方法について理解する。またtrpオペロンを例にアテニュエーションについても理解する。さらに,真核生物における様々な遺伝子発現調節方法について理解を深める。
準備学習等 メール配信した感想&質問への回答を読み,前回の内容について理解を深めるとともに,講義内容の復習を行い,小テストに備える。
第18章「原核生物における遺伝子の発現調節」P615-P655,第19章「真核生物における遺伝子の発現調節」P657-P700を読んでおく。
第16回 期末試験
全ての範囲から知識を問うテストと,予め提示された課題について論述するテストを行います。
期末試験は対面で実施する予定です。ただし、状況をみて他の方法で行う場合もあります。
準備学習等

成績評価

授業目標1-10の達成度と授業目標11および12に記載されている「得られた知識についてどう考え,これからの人生にどう生かしていくか」についての論述で成績を評価する。具体的にはオンラインの小テスト20点,期末試験50点,毎回の感想・質問内容評価30点として100点満点で成績評価を行う。なお,期末試験は知識を問う試験20点,論述試験30点とする。C(合格)となるためには,授業目標1-10の全ての項目で大学生として基本的なレベルの問題が解けることが必要である。

備考(実務経験の活用を含む)

本講義は基本的に対面で行う予定にしていますが,全学的な要請で,少なくとも最初の2回の講義はオンラインで執り行います。したがって,最初の講義日(9/30)の前日までに受講申請をしておいて下さい。講義後,毎回オンラインで受講・提出する課題があります。課題には締切がありますので,オンライン講義は速やかに受講して下さい。
対面講義の場合は,授業終了後に各自情報端末を用いて講義の感想・質問を提出してもらいます。各自所有の情報端末や学内のPCを用いて入力し,その日のうちに提出して下さい。
本授業の内容は、授業担当者の実務経験を活用したものである。